貿易をやるのに何から何まで自分でやる必要はない。前号で貿易には各分野でアウトソーシングが進んでいる事をお伝えした。外国為替決済は銀行が、輸送は船会社が、通関や船積みは通関業者が代わりにやってくれる。とは言っても、貿易に特有な用語などは正しく理解する必要がある。特に価格条件に関する用語は正しく理解していないと不測の損失を生じかねない。運賃をどちらが持つかは何時も頭に入れておくべきである。
貿易に使われる価格条件
国内取引でも価格条件に運賃や保険料を売り手が負担するのか、買い手が負担するのかはっきりさせて契約をしないと、実際に代金決済する時にもめることになる。貿易取引でも同様で、例えばアメリカからゴルフセットを輸入するのにメーカーから単に「価格は1セット500ドルです。」と言われても、運賃や保険料は輸出者側が負担するのか輸入者側が負担するのか判らない。そこでUS$450 per set EXW といえば「一セットあたり工場渡しの値段で450ドル」、US$500 per set C&F Kobeといえば「神戸までの運賃込みの値段で500ドル」、また US$500 per set CIF Kobeと言えば「神戸までの運賃・保険料込みの値段で500ドル」ということになり、運賃を売り手が負担するか買い手が負担するかはっきりする。
EXW, C&F, CIF等、これらのトレードターム(Trade Terms)を規定する略語は国際商工会議所(ICC)によって「インコタームズ」として統一的に定義づけられ、慣習も法律も違う国にまたがる取引当事者の共通の了解事項として扱われる。現行の「インコタームズ」は1990年改正のものが最新のもので、別表の如く全部で4類型、13条件ある。そのうち最も良く使われるのはFOB、C&F、CIFの3条件である。貿易をやる場合、最低この3条件は覚えておいて欲しい。
ここでは、比較的よく使われる7条件とアメリカにおけるFOBの使い方、通販などに使われる表現について説明する。
1 EXW (Ex Work)
「工場から港(或いは空港)までの国内運賃と運送保険、港(或いは空港)から輸入国までの運賃や保険料は買い手が負担する」という条件である。この場合、輸出の際の通関の手配、輸出許可の取得やその手数料などは買い手の負担になる。
2 FOB (Free on Board)
「積地の本船甲板上までの運賃や危険
は売り手が負担するが、それ以降は買い手の負担」という意味である。もう少し厳密に言うと、荷物が船の舷側の手摺を超えた段階で、費用と危険が売り手から買い手に移転するという意味である。輸出地の通関費用などは売り手が手配しなければならない。ただし、船の手配は買い手が行い、売り手に船名、入港日などを連絡せねばならない。
3 C&F又はCFR(Cost and Freight)
この条件は「輸入国までの運賃込みの値段」である。C&Fについては1990年改訂からCFRという略語が使われることになったが未だ浸透せずに C&Fが使われる場合も結構ある。
4 CIF (Cost, Insurance and Freight)
この条件は「輸入国までの運賃と保険料込みの値段」である。
5 FCA (Free Carrier)
FOBと殆ど同じだが、この条件はコンテナー船や航空貨物による輸送に使われる。コンテナー輸送が一般的になるにつれて、以前のFOBではふさわしくない点も出てきたので新たに設定されたものである。FOBとの違いは費用と危険の移転場所である。
FCAの場合は売り手がコンテナーを積地のCY(コンテナーヤード)に持ち
込んだ時点で費用と危険は買い手に移転する。コンテナーに満たない貨物(LCL Cargo)の場合は混載貨物をコンテナーに詰めるCFS(コンテナー・フレート・ステーション)に持ち込んだ段階で費用と危険が買い手に移転する。輸出通関費用は売り手の責任である。ただし船の予約は買い手がおこない、船名、入港日などを売り手に連絡せねばならない。ただ、この略語は未だ一般に浸透しておらず、FOBが代わりに使われる場合が多いようだ。
6 CPT(Carriage Paid to)
コンテナー輸送や航空貨物輸送の場合に使われる条件で「運賃込みの値段」。
海上輸送のC&Fに相当する。
7 CIP (Carriage and Insurance paid to)
コンテナー輸送や航空貨物輸送の場合に使われる条件で「運賃及び保険料込みの値段」。海上輸送のCIFに相当する。