●情報デザインオフィスにしみや
ソフトシステムの開発を武器に、パワフルに業務拡張
11年勤めた会社を辞めて資格取得を目指す
新宿区若松町、夏目坂をのぼり、道なりに続く閑静な住宅地の一画、昨年新築されたばかりの瀟洒なマンションが中小企業診断士・西宮恵子さん(36歳)の仕事場だ。
住居も兼ねた1DK、家賃12万円の部屋の中には、据え置き型のコンピュータが2台、ノート型パソコンが1台、インターネット用、携帯用にと、合わせて3台ものコンピュータがフル稼働している。中小企業診断士になぜ、の疑問もわく。が、なんと彼女は、中小企業診断士の中でも情報部門を専門とし、情報処理技術者(システムアナリスト)の資格も併せ持つ、コンピュータを操るスペシャリトでもあるのだ。
そんな彼女の経歴はこうだ。高校卒業時の今から18年ほど前、「これからはコンピュータだ」と確信した彼女は、コンピュータ技術を習得すべく、コンピュータの専門学校に進む。就職先は、ソフトのシステム開発会社。鉄鋼メーカー、造船会社、建築会社など、工作用ロボットに組み立て、加工を処理させるソフトシステムの開発、CADや製図など、技術系企業のシステム設計を手掛けた。
しかしそこで、はたと立ち止る。企業側のニーズとソフトの仕上がりが、必ずしも合致しないのだ。つまり、ニーズを組み込んだはずのソフトが、実際にふたを開けてみるとうまくかみ合わず、使えない。それが、なぜ起こるのか。技術ニーズとシステム開発の間に立ちはだかる壁とは何か。それは、ソフトの設計と企業のニーズ双方を専門的に熟知し、ジョイントできる人材の欠如が原因だった。
「企業の中に、深くくい込み、システム開発をスムーズに導く、システムアナリストでありたい」。そう考えた西宮さんが、思い立ったのは、中小企業診断士への道だった。すると決断は早い。11年努め上げた会社を辞め、1年間の勉強期間を経て、難関の中小企業診断士の国家試験に見事合格。中小企業診断士となり3年を経た今、コンピュータ系、流通系の企業を担当、各種セミナーの講演会にと、多忙な毎日を送る。
お客は社長、責任は重いがやりがいがある仕事
今は、企業のトップと会社の運営についてじっくり話し合い、売り上げを上げる効率的で効果 的なシステム開発を考える立場。いわば、受注先の社長と立場的には同じ、あるいはそれ以上の責務を担う。
「会社勤めしていた時と違い、私の上には今、誰もいません。すべて一人で処理しなければならない、非常に責任の重い仕事です。でも、それだけに、やりがいがあります」と、西宮さんは目を輝かせる。
それまでは、コンピュータが相手。人と話す機会が少なかった西宮さんだが、この仕事になって、人と会う機会がめっきり増えた。どちらかといえば、話すのが苦手だったという西宮さんを、社交的に変えた。
「企業のトップとお話をさせていただくことで、私自身、前向きな生き方や決断の早さなど、学ばせていただくこともたくさんあります。異業種を手掛けることで、そこでの問題点、共通 点を間近に捉えることができ、垣根を越えたネットワークのアイディアも沸いてきます。仕事の幅が格段に広がるうれしさを実感しています」と、西宮さん。目下、今後盛んになる海外投資市場に向け、財務部門も専門化するべく闘士を燃やす。
そんなパワフルな西宮さんは、なんと現役の大学生でもある。今、早稲田大学社会学部の4年生。中小企業診断士の勉強をした1年間に、まとめて受験勉強をし、中小企業診断士と大学の合格をダブルで果してしまったのだ。学んでいるのは、マーケティング、法律、経営、財務など、当然、今の仕事に役立つ分野だ。 「授業は夜間なのですが、それでも最近は仕事が忙しくて、1カ月ほど、学校をさぼってるような状態です。でも、若い人達と教室で肩を並べ、勉強に、飲み会にと、一緒にすごせるのは、とても楽しいです」と西宮さん。オンとオフの境目もなく、仕事中心のライフスタイル。しかし、ストレスはないという西村さんの活力源は、そんなキャンパスライフにもあるようだ。
「中小企業では、一人がいくつものセクションを兼任する場合が多いので、その比重を少しでも軽くするソフトの開発をすることも大切な仕事のひとつです。手始めは、誰がその企業にとってのキーマンかを見つけること。キーマンは、企業側の考える人と、必ずしも同じではありません」。西宮さんの目が、きらりと光った。歳よりも数段若く見える可憐でやわらかな物腰の西宮さんの、その自信に満ちた表情が、より一層まぶしかった。
他業種同様、売りに直結する女性の感性は中小企業診断士の分野でも、今、強く求めらているという。中小企業診断士の中で女性が占める割合は、現状、わずかに3%。少ないながらも、今後ますます増大するニーズに、果 敢に応える西村さんの活躍に大いに期待したい。