アロアロインターナショナル
反骨のアーティストは、SOHOのロケーションにもこだわる
肩書きに合わせてオフィス立地を選ぶ
大きな木の丸テーブルのむこうでくつろぐ中ザワ氏。そのアトリエ(兼住居)は、閑静な住宅街にある洋風の2階建て賃貸テラスハウスだ。抑えたライティングに木肌の家具、机の上にはマッキントッシュがごく自然に並び、足元では犬が自由自在に歩き回る。訪ねたのは夕方だったが、暗色の内装に夕日が差し込み、ほどよい散らかり具合・何とも居心地がいい。「平均的なフリーランスのオフィスでしょう」と氏は言うが、おもしろいのは、中ザワ氏が自分のめざす方向に先駆けて、オフィス立地までも選んできていることだ。
そう、氏の現在の肩書は「美術家」だが、90年代初めから最近まで独特のポップな「ヘタうま」CG(コンピュータグラフィクス)で活躍したイラストレーターだったのだ。以前のSOHOは恵比寿駅近く。イラストレーターに向く立地だ。そこから5年前、広くて安く、同時により「美術家」に向くロケーションに、と地名までを考慮して移転した。
眼科医からの転身
中ザワ氏は眼科医出身という変わり種だ。10代から作品は認められ、大学在学中にアクリル画で日本グラフィクス展に入賞、個展も開いていた。作風は純粋美術。しかし仕事として「社会との接点が少ない感じのする」画家を選ぶことに抵抗があり、眼科医になる。画家にはなりたくないが、思いは断ちがたい。そこで医師として勤務しながら『近代美術史テキスト〜印象派からポスト・ヘタうま・イラストレーションまで〜』という著書を書いて自分を整理、作家性のあるイラストレータとして、自宅で仕事を始めてしまった。
当時は「コンピュータで描かれた」だけでもて囃されたCGの出始めの時期。しかし、氏はあえてそのCGでイラストを描くことを選び、パソコンを導入。コンピュータならではのギザギザなアウトラインで表現したポップなイラストは、ポスター、パッケージ、雑誌にと依頼が相次いだ。美術家もとみやかをる氏と共同でアロアロインターナショナルを設立。作品CD—ROMはマルチメディア分野アート賞を受賞、ソフト開発、公共施設のインタラクティブシステム制作、と順風満帆。しかし昨年、モノクロ・デジタルの禁欲的作風に作品を一変させ、同時に肩書を「美術家」に変えてしまった。
「理論的に存在すべきなのに実現されていない作品を作る」という氏は、ビジネス上の勝算ではなく、「今自分はこれをすべき」ということだけで動くという。実際「美術家」を名乗ったとたんに仕事量 は激減した。しかし一方でユニークなグループ展や、美術史・思想に関する執筆依頼が増え、夏には単行本『西洋画人伝』も刊行予定だ。ゆっくりだが周りも変化を認めているのだ。
さて、実は今また経費縮小と制作のリズムをつけるため、転居を思案中という。「5年間。長くひとところに居すぎたからね」と笑う中ザワ氏、次には何をしかけるのだろうか。