旅の本だけを集めた本屋を開業 (お仕事講座(自立独立開業ガイド))
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旅の本だけを集めた本屋を開業

●旅への思い断ちがたく
 旅の本だけを集めた本屋を開業
 人生を決めたのはインドでの体験だった

飄漂舎(ひょうひょうしゃ) 主人/藤井照雄さん

 来年の春、JR大阪駅近くに日本一の売り場面積を持つ超大型書店が誕生する。その広さ約5600平方メートルで店内には約40万種・100万冊に近い本を並べるというから、もはや書店のレベルを超えた図書館並みのスケールだ。その日本最大の書店の出店予定地から北西へ3キロ、大阪市淀川区の住宅街の中にあるのが、わずか23平方メートルの本屋「飄漂舎」。こぢんまりとした店内には単行本、文庫、新書、雑誌、手づくり感覚の小冊子など35000冊の本が棚や平台に並べられているが、変わっているのはすべて「旅の本」であることだ。

「思いきり個人的で趣味性の強い本屋を経営したかったんです」

 店主の藤井さんによると、店名の「飄漂舎」は、風にさすらい、水に漂う仮の宿、という意味だそうだ。

 藤井さんが初めて外国を旅行したのは20歳の時。大学を休学し、東欧からアジアの国々を半年間放浪した。旅も終わりに近づいた頃、日本を離れて2〜3年という人々にインドで出会った。彼らは日本で資金を作り、それが尽きるまで旅を続けるという生活をしていたので、思わず「将来が不安じゃないの?」と聞くと、「不安だけど、それはサラリーマンをしていても、他の仕事をしていても同じだよ」という返事。その時、「そうか。好きなことをする人生の方がいいよなあ」と、スッと肩の力が抜けたという。

 その後、流通関係の会社で8年間ほどサラリーマン生活を経験するが、何度か外国旅行をくり返すうちに、なんとなく会社に居づらい空気を感じるようになった。その時、インドでの体験が蘇り、脱サラを敢行。そして好きな旅と本がクロスする、ちょっと個性的な本屋開業を思い立った。

 本屋を開業する前に出版社や取次店を訪ね「よろしく」と挨拶をして回ったのだが、相手の反応は思わしくない。大型店舗の出店ラッシュが続き、小さな本屋は絶滅するだけ、と反対されたのである。

「でも、ハイわかりました、というわけにはいかず、結局は見切り発車でスタートです」

 駅前や商店街などの好立地は資金面の問題もあって最初から除外し、ありふれた住宅街の中の店舗付き住宅を貸家ながら確保した。内装は木目の自然な質感を生かしたカントリー風のデザインで統一し、ファサードはログハウス調。エスニックなFM音楽が流れる店内にはリュックやバンダナ、アジアの雑貨なども並べられ、本屋らしからぬ雰囲気が漂っている。二階の和室では旅をテーマにした写真展を開催するなどコミュニティ・スペースの機能も備える。

 商品となる旅の本を揃え、なんとかオープンにこぎつけたのが昨年の11月。開業にかかった資金は外車一台分ほどだった。開業直後は来店するお客も少なかったが、新聞やタウン誌などで紹介され、次第に名前が知られてきた。「こんな本屋を待っていた」と、京都や神戸からも客がやってくるという。一度訪れた人はリピーターとなり、ファンレターらしきものも届く。午前中と定休の木曜日は出版社や取次店を回り、これだと思う本を探し、仕入れる。すべて買い取り仕入れなのでリスクも大きいがその分利幅もある。

「まだ軌道に乗ったわけではありません。でも、とにかく行けるところまで行こう、という気持ちです」

 旅好き人間が集まり、初対面同士でも旅の話題で盛り上がる——そんな本屋のオヤジになりたいというのが藤井さんの夢。それが少しずつ実現しようとしている。

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