毎週月曜日FAXで届く、アメリカの最新ビジネス情報
トレンド・スポッター
アメリカで流行したものは1、2年の時間的経過を経て必ず日本でも流行するといわれる。つまり、日本の1、2年先を知りたければアメリカの今を見ればいいわけである。
木村恵子社長のトレンド・スポッターは、そんな日本の数年先のビジネストレンドを読む上で非常に有効な、アメリカの最新ビジネス情報をウイークリーのFAX情報紙「WORLD REPORT(ワールド・レポート)」として配信している会社である。情報紙は毎週月曜日に配信され、一回につき10本の情報が掲載される。
その具体的な中身は、アメリカで事業化されているニュービジネスの実例を中心にそれらのビジネスを生んでいるアメリカ社会そのもののトレンドも掲載している。
「現在のアメリカで成功していて、日本にはまだない、日本で可能なビジネスであること。この3つのポイントを満たしていることが掲載の条件です」(木村社長)。
購読料は税別で年間5万4000円。年48回の配信なので、1号あたり1000円ちょっとの計算になる。これを高いと思うか安いと思うか。
「毎週毎週、アメリカ在住の当社のコーディネーターから送られてくる膨大な量の資料を翻訳し、先程の掲載基準の振るいにかけて取捨選択する作業の手間を考えたらこの購読料は格安だと思いますよ(笑)」
情報を元に起業し、成功する人も
同紙の購読者の中には、掲載された情報をヒントにそれを事業化して成功している人も少なくないという。そういう人たちにとってみれば購読料は木村社長の言う通り格安といえるだろう。
そもそも木村社長がこのビジネスを始めたきっかけは、ひょんなことからだった。12年前、木村社長は出版社で編集者として働いていた。ところがその会社が倒産してしまい、彼女はフリーの編集者としての生活を余儀なくされた。そんなとき知り合いを通じてめぐってきた仕事が「WORLDREPORT」の発行だったのだ。
「当時は第二次ニュービジネスブームで、大手の企業を中心に新規事業のネタが広く求められていたんです。アメリカで事業化されているものでまだ日本にないビジネスの情報を求める企業をネットワークした会員制組織ができてそこの情報誌の企画、制作、編集を知人から任されたわけなんです」
この組織は、週刊のFAX情報誌と通常の紙媒体である会報誌を月刊で発行していた。しかし、2年ぐらいで組織は解散してしまう。
「会員制の組織そのものはなくなってしまったわけですが、FAX情報紙には固定客もついていたのでその権利を私が譲り受け、それを契機にフリーという個人事業の形態から法人の体裁を整えるため株式会社トレンド・スポッターを設立しました」
それ以来12年間同社は毎週「WORLD REPORT」を発行し続けている。いまでは通巻565号を数えるまでになった。同社では、掲載内容に関するさらに詳しい情報を求める人に対して有料で個別調査の仕事も受けている。
情報誌をインフラとし、調査・コンサルティング業も行う
「12年間継続して出してきたことによって当社に膨大な量の情報が蓄積されているわけです。企業からは、特定分野のビジネスに関する情報を求める調査依頼が入ることも少なくありません。このような依頼がくるのは、ニュービジネスといったらトレンド・スポッターというふうに、この業界での高い評価をいただいているからだと思います」
同社は情報紙の発行を自社のインフラと位置付けそこから派生する調査やコンサルティングの業務によって事業自体の規模を拡大させていこうと考えているようだ。事実「WORLD REPORT」の売り上げ自体は同社の売り上げの半分以下だという。
新規事業を考える人に新鮮な情報を提供し、場合によっては事業化のコンサルティングも引き受ける。以前は大企業の新規事業セクションからがほとんどだった調査やコンサルティングの仕事も、いまでは脱サラを考えるサラリーマンや主婦など個人からのそれも増えているという。同社はSOHO起業家にとって頼りがいのある会社でもあるようだ。
SOHOベンチャ−のこの視点に学べ
「トレンド・スポッターの情報管理と広報宣伝術」
会員制の情報ビジネスを主催するものにとって、情報の外部流失は頭の痛い問題である。トレンド・スポッターが、このインターネットの時代にあえてFAXというメディアを選んでいるのにはそれなりの理由がある。電子メールなどを使った場合、同社の配信した情報がそのまま違法に2次使用されてしまう可能性が非常に高いからだ。
「情報ビジネスは、その情報をあまり拡散させないことが大切です。まして、会費を払わなくて簡単に手に入ってしまう情報などにだれもお金を出そうと思わないでしょう。当社のようにFAXを活用していても海賊版が出回ります。ましてこの情報を簡単に2次使用できる電子メールで流してしまえば情報の価値は一気に下がってしまいます」
もちろん、FAXで流される情報でも自分でデータに起こしてしまえば簡単に不正使用が可能だ。しかし電子メールほど簡単に使用できないのも事実である。
一方同社ではFAX情報紙として配信された情報のなかから一年ぐらい経過して多少鮮度が落ちたものを編集し既存の出版社から『アメリカ発ニュービジネス注目200選』と題し単庫本として発行もしている。同書は一年半に一冊のぺースで出版されすでに9冊を数える。この本の発行は同社の広報宣伝活動の一環でもあるようだ。本を見て情報紙の購読者になる人も多いという。
「少し鮮度の落ちた情報を一般に向けて公開しているのは、会員の権利の保護とは別にそれぐらいたったもののほうが一般受けするという理由もあります」