教わり上手になろう
「どうして若い人がSOHOしたがるんだろう、って不思議に思いますよ。若いうちはどんどん会社で鍛えられたらいいじゃないですか。私なんかもうスタートの時すでに若くなかったしド素人でしたから、人様から技術をどう教えていただくかってことを随分工夫しました。技術向上の方法は人それぞれでしょうが、『教わり上手』になることは大切でしょうね。『この人にきかれると忙しくてもつい教えちゃう』みたいな、ある種の甘え上手。勿論、頼れる人脈を作っておくことが先決ですけど」
制作現場の生きたノウハウは本に載っていない。彼女のいう『教わり上手』は第一線でSOHOを続けていく上でとても大切なことかも知れない。
お互いの顔と顔、が商売の基本
「失敗はよくしました。校正しきれなくてミスだらけのデータを納品して、それ以来仕事が来なくなったり。やはり最低限仕事に責任の持てるだけの余裕は必要ですね。でも私は出来るだけ『ハイハイッ!』って何でも気軽に引き受けるようにしています。私より仕事の出来る人はいくらでもいるわけで、わざわざ私に仕事をくれるのは、『私の顔が見たいから?』(笑)ファックスで済むような用件でも『ちょっと顔出さないか』って言われたら飛んで行きます。『えー、ファックスじゃダメですかぁ?』なんて絶対言わない。人間、お互いに顔を見ると安心するんです。(いまコンディションどうかな、徹夜続きで青い顔してるな、ミスしそうだなー)(笑)。こっちはこっちで(社員増えたな、儲けてるんだろうなー)とか(笑)。そういう雰囲気、お互いの状態を把握しあうって仕事を安定受注していく上でとても大切ですよ。」
──自宅の使用機材は?
「Macはこの前G3に買い替えました。ノートパソコンはIBMのThinkpadです。モバイルは使っていませんが、インターネットはどこからでもつなげます。あとはスキャナとモノクロプリンタ二台」
──失礼ですが現在の収入を教えていただけませんか?
「この会社でいただいているのが普通のOLさんより少し多いぐらいかしら。それ以外のお仕事の合計が、それと同じか、やや少ないくらい。勿論月によってまちまちですが、年収で考えると同年輩の男性サラリーマンの平均以上じゃないでしょうか? これ以上無理して増やしたいとは思いません。減ると困りますけど」
取材の間すっかりタイクツしきったノンちゃんを連れて、最後に外で記念撮影。いきなりお母さんの顔に戻った橋本さんを見て「長年SOHOを続けていくためには、何か強力な精神的支えが必要なんだろうな」としみじみ感じた。人生に「もしも」はないとはいえ、もしも子供がいなければ、子供を育てる苦労がなければ彼女は今日までSOHOを続けてこられただろうか。SOHOには単なる職業としてではなく、一人の人間の生き方として考えなければなら.ない様々な側面があるようだ。
二人は鮮やかに笑いながら、繋いだ手を大きく振り遊歩道を駆けていった。
SOHOはスペシャル&コンビニエンス
「外注に回ってくるのは社員に出来ない仕事だけ」という傾向は今後ますます強まるに違いない。「急にスペシャリストにはなれない」というあなたにアドバイスを。なにも、特別な技能を新たに身につけることはない。既にあなたが身につけている、もっとも得意とする分野を苦手にしている会社とつき合えばいいのである。
背水の陣の覚悟で
いったん勤めをやめてSOHOになり再就職した場合、前よりもいい条件の就職口を見つけるのは至難の業だ。石の上にも…の言葉どおりまず三年間はなにがあっても辛抱する覚悟が必要だろう。仕事を発注する側も真剣勝負だということを忘れてはいけない。腹の据わっていない相手では、出してもいい仕事まで引っ込めてしまう。
教わり上手
変なプライドは捨てて、知らないことはどんどん教わろう。勿論面倒がられたり「え?こんなことも知らないの?」と軽蔑されたりすることもある。しかし、そういう相手は大抵の場合大したスペシャリストではない。特にコンピュータ関係の知識は専門化が進んでいるのですべてに詳しい人などいない。「初歩的な質問すぎて馬鹿にされないか」などと卑屈にならず、道でも尋ねる鷹揚さでヌケヌケと尋ねてやるのがいい。勿論教えてくれた人には礼を尽くすこと。
お互いの顔と顔、が商売の基
SOHO は絶対に出不精になってはいけない。「なんか仕事ないスかぁ?」と軽薄に得意先に顔を出すこと。卑屈になったり媚びを売ったりする必要はまるでないし、かえって逆効果だ。「今日は何曜日だからアイツが来るぞ」と得意先に言われるぐらいになれば一流。セコセコ技術の向上に励むよりも確実に仕事は増えてゆく。腕を売るのは並大抵ではないが、顔を売るのは比較的簡単だからだ。