肩肘はらずにダブルワーク
ダブルワーカーと聞くと、溢れる才能で2つの仕事を精力的にこなし、昼夜をいとわず働き続けるといったハードワーカーを想像しがち。しかしここに「好きなことを仕事にし、好きなライフスタイルを選択した結果SOHOというワークスタイルになり、もうひとつの仕事もそこから自然と舞い込んできて」と涼やかな笑みを浮かべながらさらっと語る、まさに「自然派ダブルワーカー」とも呼ぶべき存在の女性がいる。それがセキヒロミさんだ。せきさんは現在ゲーム、CDーROMを中心としたデジタルイラストレーターを本業としながら、その技術と知識を生かして、専門学校でドットの講師を勤めている。
子どもの頃の夢を現実に
「小さい頃から絵を描くことが好きで、教科書なんかイラストで真っ黒でしたね」というセキさんは、すでに小学校の時には絵を描くことを仕事にしたいと思っていたという。しかし高校卒業後、一旦は普通のOL生活を送ることに。でも「会社生活は好きではなかったし、やはり絵を描きたくて」とOL生活と平行して夜間のグラフィックデザインの専門学校に通い、ゲーム製作会社にクリエーターとして再就職をはたし、「絵で食べていく」という小さい頃からの夢をかなえた。「今はゲームクリエーターって子どもたちの憧れの職業にもなっているようですけど、当時はまだゲームというもの自体がそれほど世間に認められていませんでしたから、落書程度を持参すれば入社できたんですよ」とセキさんは笑いながら当時を振り返る。
入社後、「デジタルグラフィックに関しては、この会社で仕事をしながら一から覚えていきました」と念願の分野で精力的に仕事をこなしていたセキさんだが、なんと入社3年目頃から会社に不景気風が吹き始めた。一人、また一人と同僚が辞めていく中、セキさん自身、同僚の引きもあって在宅フリーでの独立を決意する。
仕事は派遣会社と自前のネットワークから
独立独歩のSOHOワーカーにとっては、安定的な仕事の確保というのは誰もがかかえる悩みの一つ。自らを「ドット屋」と呼ぶなど職人気質が強いセキさんは、営業や経理といったいわば本業以外の部分の活動はあまり得意ではなかったという。そこでセキさんが活用しているのが派遣会社だ。現在はクリエイター系の仕事を多く扱う派遣会社に登録していて、「仕事は派遣会社からと自前のネットワークからのものが半分ずつくらい」という状態。派遣会社を通じての仕事の場合は、「なんといっても営業・経理といった部分をすべてを代行してくれるので、その分のエネルギーをすべて製作に注ぎこめるのが魅力」といい、一方自身のネットワークから飛び込んでくる仕事に関しては、幾人もの専門家が入り込んで一つのゲームを作り上げていくという仕事の性格もあって「わがままな言い方かもしれませんが、せっかくフリーという立場で仕事をしているわけですから、仕事人としてなるべく魅力的な人と一緒に仕事をしていきたいと思っているんです」というセキさんにとっては、気心知れた相手と仕事ができることが、最大のメリットになっているようだ。自分の不得意分野はおもいきって人にまかせる、仕事を通じて作りあげたネットワークは大切にするといったセキさんの姿勢には、SOHO生活成功の秘訣がちりばめられているといえる。
人に教える難しさを痛感
SOHOワーカーとしては「私が在宅で仕事を始めた頃には、まだSOHOなんて言葉自体世間にありませんでした。ですからSOHOという言葉が後から追いかけてきたという感じで、SOHOワーカーと言われてもいまひとつピンとこないんです」というほどのキャリアを誇るセキさんだが、数ヶ月前から始めたばかりの講師の仕事に関しては、初めての経験でとまどうことも多かったようだ。セキさんが専門学校の講師の仕事に巡り会ったのも、実は派遣会社からの紹介だった。「現在受け持っている生徒は3人です。自分が理解しているということと、それを相手にわかってもらえるように伝えていくというのはまったく別の作業ですね」と、人に教えることの難しさを痛感しているという。
また実際にダブルワークを実践してみると、一方は外での仕事、そしてもう一方は在宅での仕事という難しさも重なり、やはり時間のやりくりがなかなか大変だったようだ。「私の場合、ゲームの仕事はイラストのように重い物ばかりを送るので、通信環境を考えるとどうしても夜型の生活になってしまいます。でも講師の仕事の方は朝9時20分からの授業なので、まずは朝方の生活にするのがつらかったですね」とためいきをつく。
これからもしなやかにダブルワークを実践
時間のやりくりと共にSOHOワーカーにとってかかせないのもの、それは住環境の整備だ。住居イコール仕事場のSOHOワーカーにとっては、住環境の整備が成功へのひとつのキーポイントともいえる。セキさんも「SOHO環境をより快適なものにするため」に近々転居の予定があるという。こうして仕事の環境も整え、仕事に対する意気込みをさらに燃やすセキさんに今後の予定を伺うと、「ゲームの仕事の方では、今はいわばパーツの仕事をしているだけですが、これからは企画の段階から手がけていきたい」と言い、また講師の仕事の方でも「人に教えることで自分の反省点も見えてきました。今回はちょっと準備不足だったので、次回は今回の反省点を踏まえてもっとがんばりたい」と双方の仕事に対しての意欲を語ってくれた。今後もしばらく「ドット屋」と講師というダブルワーカー生活を、セキさん流にしなやかにこなしていくようだ。