「少額訴訟」マニュアル
仕事は報酬を手にして初めて完全に終わるもの。未収金が発生するとなんとも後味が悪い。それが少額であっても、もらうべき物はきちんともらわなければビジネスとして成り立たない。そこで、少額の金銭トラブルはどのように解決したらよいのか紹介したい。
1 はじめに
「売掛金の支払いがない」、「請け負った仕事の入金がされない」など、仕事を始めたとき必ず生じてくることが未収金の問題。仕事の受注が順調であっても売上金が未回収であればビジネスではない。
今回は一番回収がむずかしいとされる、少額の未収金の法的回収方法である少額訴訟手続を紹介する。
2 少額訴訟とは
少額と頭についても訴訟であるから、請求する者(原告)が支払うべき者(被告)に対して裁判所に訴える手続。一般に利用しやすいように、裁判の迅速性や効果的な解決を目的に、主に次の特色がある。
①30万円以内の金銭の請求に限定
②原則として1回(1日)の裁判で終了し、その場で判決
契約書、納品書、請求書、証人などの証拠はその裁判の日に取り調べができるものに限定
1年間の利用回数は10回以内
裁判は簡易裁判所で行われる
分割払いや支払猶予の判決あり
3 手続き
普通の訴訟と比べ法律上の特色や諸々の規定など細かい理屈はこれくらいで、具体的な手続きのプロセスを紹介する。
① 訴えの申立書である訴状
ワープロなどで訴状を作成してもよいが、注意すべき点がいろいろあるため、
簡易裁判所にチェックマークと穴埋めでできる訴状が用意されているので(文書1、2)、その用紙を利用すると容易に訴状が作成できる。前もって裁判所に行き、裁判所受付窓口か売店で用紙を取得する。ついでに所員からこの少額訴訟についての説明書やパンフレットをもらっておくと何かと参考に。
② 訴えの申立て
訴状に必要事項の記入ができたら、訴状とともに証拠となる契約書、注文書、請求書などを裁判所へ提出する。これらは証拠も含めてコピーをして3部用意し、2部は裁判所へ、1部は自分の控えとして手元へおいておく。他に申立て費用として収入印紙(5百円から3千円)と郵便切手数百円分が必要になる。例えば請求金額が18万円なら印紙は2千円。
この訴状提出のとき、裁判所書記官からこの手続きの説明を聞いておき、できれば裁判の日取りを決めておくとよい。
また必要不可欠なものではないが、被告(売掛先)との売掛金未収までの経緯をまとめた書面や過去の取引内容など、参考事項をまとめたもの(文書3)を同時に提出するとよい。
なお、訴状の記入は最初からきちんと書ければそれに越したことはないが、多少間違いがあっても裁判所で教えてくれるので安心してよい。
③ 裁判当日までの間
訴えの申立てから裁判の当日までの間に、訴えの不明確な部分の確認や、ほかの証拠の有無など、訴状の不備や裁判の内容に参考になることがらについて書記官から電話が来ることがある。内容に即した対応をすれば良い。必要であればファックスなども利用できる。
④ 裁判当日
証拠となる契約書や訴状コピーなど裁判に関する書類を持って行こう。訴えた内容により異なるが、30分から2時間くらいで裁判が行われる。
裁判は裁判官と被告(売掛先)とのやりとりであるが、裁判官がある程度指導してくれるので、請求する売掛金の内容、被告とのこれまでの交渉内容などを証拠を提示しながら述べればよい。前もって言うべき内容をまとめ、時系列順に箇条書きにして持参すると当日安心である。
⑤ 判決
裁判官から和解の勧めがあるが、内容に応じられなければ断り、判決を求める。
判決は即時に出る。勝訴であっても被告の財産状態などにより分割払いや猶予期間をおいた支払いの判決もある。その日のうちに判決書の交付を受けよう。
4 まとめ
少額の売掛金回収は専門家に頼むには費用倒れになるおそれがある一面、通常のビジネス上の未収金は支払いに関して売掛先と意見の食い違いも少ないため、本人で裁判を行うことができる。
少額訴訟は、訴状も裁判所に備わっており、内容説明も裁判所員が結構丁寧に教えてくれる。また裁判も1日で終了するため、日々の仕事や生活への影響も最低限ですみ利用しやすい。
「いい勉強になった」などと自分を無理に納得させ泣き寝入りをする前に、この少額訴訟を一度利用することをお奨めする。