「自閉症や引きこもり(家に閉じこもって外へ一歩も出ない)の子供たちを抱えるご両親がたくさんいる前で、約一時間半、『神経症と催眠療法』について講演したんです。赤面症に悩んでいた、この私がですよ。それをなんとかこなしたことで、カウンセラーとしてやっていける自信ができたかな」
自宅近くのビルの中に「たとえヒマでも、なんとか一年間は食べていける
くらいの蓄えを用意して…」、20m2にも満たない小さなカウンセリングルームを開いたのは、昨年の2月。ちなみに、講演を聞いてくれた家族の方の多くが、クライアント(カウンセリングの相談者)として「山本心理療法室」を訪れたという。
カウンセラーという仕事を始めるにあたって山本さんが心がけたのは、クライアントと同じ目線で語り、接することだった。だから白衣は着用しないし、ことさらな指導用語は絶対に使わない。型にはまったカウンセラーにはなりたくないからだ。
相談は予約制で、月曜から土曜までの午前十時半から午後九時まで受け付け、リラクセーションの心地よい音楽が流れる中、お茶をすすめながら一人一時間前後のカウンセリングを行う。訪れるのは不登校に悩む中学生、どうしても赤面してしまう女性、家族の中で孤立していると感じる主婦や父親など、さまざま。時間が長いので、たくさんの人を対象にしているようにみえるが、一日にカウンセリングできるのは3人まで。相手の話を聞き、心に働きかけ、目には見えないこわばりを解き、コトバを通わせる。これには大変なエネルギーがいるそうだ。「だから3人まで。合間の時間は本を読んだり、友人と会ったり、結構自由に過ごしている」とか。
デザイナーからカウンセラーへの転身だが、性格的にも能力的にも自分に合っているかな、と自己診断。クライアントが相談中に辛かったことを思い出し、耐えきれなくなって思わず大声で泣き出した時、山本さんも一緒になって涙を流す。
「人間関係で傷ついた人の心を癒すんは、結局のところ、人間関係でしかないねん。クライアントにどこまで近づけるのか。カウンセラーって、人間臭いのが一番大事やと思うわ」
突然、大阪弁が出た。やわらかく、温かい言葉だった。