ガラス表面にさまざまな意匠を手で彫り込むエッチングや、色の付いた微細な砂を勢いよく噴射させて模様を浮かび上がらせるサンドブラストという技法を学び、ガレージにエアコンプレッサーやサンドブラストの作業を行うためのエッチャーなどの機器をひと通り揃えて、「ガラス工房・健」という看板を掲げた。今年の4月のことだ。
これまでにグラス類や皿、花瓶、インテリアガラス、テーブルの天板など多彩な作品を手がけた。既製品もあるがオーダーメイドが基本で、注文を受けてからオリジナルな図案を考え、手彫りし、あるいは色付けを行う。制作期間は短くて一週間足らず、大作なら一ヵ月にもなる。価格も千円から十万円以上ものまで、さまざま。
エッチングガラスは、図案と微妙な彫りのリズム、色彩のひろがりなどが体となって意匠となり、私たちの知らない、もうひとつのガラスの美しさを生み出す。仕事自体は楽しく、西口さんはこの道を選んだことを後悔していないが、注文がコンスタントに入るようにならないと、生活も厳しい状態だ。このままでは奥さんが外へ働きに出て、自分は「主夫」に転身することが現実のものになってしまう。
「できるだけ早い時期に作品展を開こうと思っています。エッチングガラスの素晴しさを知ってもらう一番の近道ですから。それとビジネスとして考えた場合、ドアや明かり取りなど建築関係のインテリアガラスが単価も大きいので、そちらの方に力を入れていかなければ…」
そのために建築設計事務所ヘのアプローチも、これまで以上に積極的に行うつもりだ。また、ホームページで情報を発信し、インターネット通販にも挑戦したい気持ちがある。ビジネスが軌道に乗れば教室も開きたいな、と夢は広がる。
ところで「健(たける)」という工房ネーミングの由来。西口さんには現在2人の女の子がいる。いつか男が生まれたら絶対に付けようと思っていたのが、「健」という名前だ。未だ見ぬ男の子なのだが、しかし「工房・健」のほうは生まれ、すでに歩き出してしまった。西口さんは、まだヨチヨチ歩きの「健」君を、何としても立派に育て上げなければならない。