21世紀は農業の時代「とちおとめ」にかける若きファーマー (お仕事講座(自立独立開業ガイド))
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21世紀は農業の時代「とちおとめ」にかける若きファーマー

21世紀は農業の時代「とちおとめ」にかける若きファーマー

ウスイファーム 臼井美幸さん

●周囲の反対を押し切っていちご農家に転身

 いちごの香りが立ち込める中、今朝取ったばかりの「とちおとめ」をパックに並べながら、臼井さんは語る。

「日本の通信や情報機器が、アメリカに比べて2、3年遅れているのを痛感しました。向こうは、ポケベルは既に3行表示が当り前だし、CPUは小型化されていましたからね。」

94年にIBMのアメリカ研修旅行に参加したときの体験は、まさにカルチャーショックだった。

 さらに、景気にも陰りが表われ始めていた頃で、営業マンとして培ったノウハウや誇りも揺らいでくる。仕事への情熱もやがて薄れる。会社を辞めて、自分で何かをしたい。では、何をしよう。趣味で始めたインターネットを生かすことはできないか? 新天地を求めての模索が始まるが、意外なところであっさりと結論が出る。

 臼井さんは、生まれも育ちも栃木県の壬生市。回りはいちごのビニルハウスが建ち並ぶ。たまたま、近くに住む親戚 の増山さんが、使っていないビニルハウスを持っていることを聞いて、いちご作りを決めた。一番気に入ったのは、いちごの収益の確実さと農業の「働いた分だけ収入につながる」という明快さ。

 いちご農家としての独立の考えを話すと、母親は当然のことながら、周囲の農家や増山さんまでもが反対した。しかし、自ら頑固だと認める臼井さんの意思は変わらない。増山さんのいちご作りを1年間手伝いながら農法を覚え、空いているハウスを借り受けることとなった。


●収穫時期まではひたすら我慢

 97年、いよいよ自分のいちご作りが始まる。

 まず、ハウスの整備。水道の配管、電気の配線も自分で行う。メンテナンスを考えると、状態を把握していた方が自分で修理ができて、復旧に時間がかからないからだ。50mのハウス4棟を一人で仕上げた。また、いちごは畝を作ってそこに植えていく。畝作りのための機械は一年に1回しか使わない。経費節約のため、一升びん1本を持っていき貸してもらった。

 いちごは親株から子苗を取って増やしていく。苗は一度、鉢に植えて一定期間栽培し、ある程度の大きさのときにハウスの畝に植える。200本の親株から8000本の苗を取ることができた。そして、9月中旬から苗の定植を始める。

 開花時期には、蜜蜂を業者から借りてハウスに放す。また、いちごは病気に弱いため、消毒も怠ることができない。畝にビニルをかけたり、暖房の準備をしたりと、時間に追いかけられる日々が続いた。

 とちおとめの場合、開花後30〜40日で収穫できる。

「いちごには、急激な温度差や日照不足は大敵ですからね。特に、この期間が要注意なんです。」

と臼井さんは淡々と話す。おそらく、薄氷を踏む思いだったろう。

 加えて、蓄えも目に見えて減っていった。一般に、農家は収穫までは収入がない。作物を売って、初めて経費なども支払える。そのときの心境を尋ねると、

「隣のハウスでは40年いちご一筋の増山さんが、一か月早く収穫してたから、うちも大丈夫とは思っていましたけれど…。」

と笑いながら答えてくれた。

●香りが特徴 ウスイファームのとちおとめ

 ウスイファームでも12月に入り、いちごの収穫が始まった。クリスマスケーキに乗せるためのいちごの需要があるために、価格が急騰する。1日の売上が10万円に及んだこともあるとか。ただ、昨年の場合は、ケーキに合うLの大きさのいちごが不足していたから高値が付いたそうで、毎年そうだとは限らない。

 現在、ウスイファームではとちおとめを市場に出荷しているほか、産地直送便として、消費者に直接いちごを届けている。また、直売店の契約を1店舗と結んでおり、自宅横でも直売所を設置している。臼井さんが初めて挑戦したとちおとめの評判は上々である。

 もともと、とちおとめという品種は大きくて甘くなる。しかし、臼井さんはある方法により、より強い香りを持ったとちおとめを作った。そのため直売店でも人気があり、週200パックを卸している。また、直売所で購入した人は、必ずと言っていいほど、リピーターになるという。

 目下の悩みは市場での価格が下がり続けていることと、消費者はいちごの時期がもう終わったと思っていることだ。

「直売所に来てくれるお客さんも、5月になると極端に減ったからね。」

と残念がる。ちなみに5月末までは確実に収穫できるらしい。

 標準的ないちご農家で、約10aのハウスからの売上は500万円になる。これが基準値らしい。ウスイファームの場合は、2月に収穫が落ち込んだのと自然発生的なロスが10%近くになるため、予想収穫量 は6〜7t。

「やる気と体力があれば、いちごはやった分だけ応えてくれる。」

ということばから、自分のとちおとめを初めて出荷して得た、確固たる自信が窺える。  

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